研究成果 国立遺伝学研究所・浅川和秀 平成23年11月29日

運動ニューロンが光るゼブラフィッシュ

浅川 和秀(国立遺伝学研究所 初期発生研究部門)、東島 眞一(岡崎統合バイオサイエンスセンター)、*川上浩一(国立遺伝学研究所 初期発生研究部門)*:corresponding author

Developmental Dynamics 241: 327-332, 2012

「あの子の運動神経は親ゆずりだね。」などとよく言われるように、私たちは、体格だけではなく、身のこなしなどの運動能力が遺伝することを何となく知っています。これは、運動のパターンを制御する神経回路の働きや、その形成過程が遺伝的な制御を受けていることを示唆しています。運動の遺伝的制御の実体とはどのようなものでしょう? この問題を解くための一つの大きな鍵となるのが、様々な種類の神経細胞が複雑に入り組んで作られている運動神経回路の微細構造を遺伝子の機能と対応づけることです。
今回、我々は、小型熱帯魚ゼブラフィッシュをお湯の中で泳がせるだけで、ゲノムに緑蛍光タンパク質遺伝子GFPをランダムに組み込むことができる手法を開発し、この手法を用いて特異的な神経細胞集団が緑色に光るトランスジェニック系統を探索しました。その結果、mnxタイプの転写因子をコードするmnr2b遺伝子の活性によってGFPが発現し、脊髄運動神経と外転神経が緑色に光るトランスジェニック系統を単離することに成功しました。この方法を重点的に用いれば、運動神経のみならず、様々な種類の神経細胞を蛍光で可視化できるので、運動神経回路の構造、さらには機能をより詳細に理解できるようになります。


クリックで大きい画像へ

図1: EGFPによって可視化された外転神経(A、矢頭)と脊髄運動神経(B)。スケールバーは50µm。


× このページを閉じる