研究成果 京都大学・江島亜樹 平成24年9月25日

ショウジョウバエはメスまでの距離感によって求愛の歌い分けをする
〜匂いによって「空気を読む」オス〜

Alexander R. Trott1 , Nathan C. Donelson1, Leslie C. Griffith1, *江島亜樹2(1ブランダイス大学・生物学科、2京都大学・生命科学系キャリアパス形成ユニット) *:corresponding author

PLoS ONE 7(9): e46025. doi:10.1371/journal.pone.0046025

有性生殖を行う多くの動物にとって配偶者選択は重要な問題です。メスに気に入られるために、オスはあらゆる感覚を駆使して情報収集を行い、アプローチを調整します。
ショウジョウバエでは、嗅覚により相手のフェロモンを識別し、求愛するかどうかを決める事が知られていますが、本研究では、新たに、オスが匂いによって相手メスまでの「距離」を推定して、「逃げて行くメスには音の大きいパルス歌(pulse song)」「近くのメスにはささやきハミングのサイン歌(sine song)」という求愛の歌い分けをしているという事を明らかにしました。嗅覚変異体 Orco2のオスはメスの活動状態に関わらずいつも同じパターンで歌い続け、求愛も失敗してしまいます。
以上の事から、相手メスの性的受容性に応じて求愛歌プロファイルを変化させるというオスの柔軟な求愛アプローチが、メスの最終判断に重要な役割を果たしていると考えられます。

ハエの世界でも「空気の読めないオス」は嫌われてしまうのです。

 

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図1A:オスの求愛歌プロファイルとメスの活動性を同時記録する実験セットアップ。オスの求愛歌はpulse songとsine songに分けられる。メスの活動性はチャンバー中心線をまたいだ回数をカウントして計測する。
B:野生型系統と嗅覚変異系統Orco2オスの求愛歌プロファイル。全体の歌のうちpulse songの割合を示している。野生型オスはメスの活動性が高い時にはpulse songが多く、活動性の低いときにはsine songを主に歌うようになる。Orco2変異体オスはメスの活動性に関わらず一定の割合の歌を歌っているのが分かる。


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図2:歌の開始と二個体間の距離。pulse songは距離が離れる時に歌われ、sine songは距離が小さくなる時に歌われる。


参考文献:
Trott AR, Donelson NC, Griffith LC, *Ejima A. (2012) Song Choice is Modulated by Female Movement in Drosophila Males. PLoS ONE 7(9): e46025. doi:10.1371/journal.pone.0046025.


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