研究成果 筑波大学・古久保 – 徳永 克男 平成21年12月1日
ショウジョウバエを用いてヒト統合失調症のメカニズムを探る
Modeling schizophrenia in flies.
*古久保 – 徳永 克男(筑波大学・大学院生命環境科学研究科・構造生物科学専攻)*:corresponding author
Progress in Bran Research: Gene Models of Schizophrenia, pp 107-115,
Elsevier Science, New York., 2009.
統合失調症は人口の1%が罹患するきわめて罹患頻度が高い精神疾患であり、その発症には複数の遺伝的要因と環境要因が複雑に関与する推察されている。近年、統合失調症を多発する家系の染色体診断と、患者ゲノムの網羅的解析により多数の候補遺伝子が同定されつつある。しかしながら、候補遺伝子から脳の病態に至るメカニズムの間には依然として大きな隔たりが存在しており、疾患メカニズムを分子レベル理解するためには、有効なモデル動物を利用した個体レベルでの分子遺伝学的研究が必要かつ不可欠である。ショウジョウバエは、これまでにもアルツハイマー病等の神経変性疾患の遺伝子レベルにおける発症機構の理解にきわめて有効なモデルであることが示されてきた。しかし、統合失調症や双極性障害などの複雑な精神疾患において、ショウジョウバエを使用した研究は、はたしてどの程度有効であるのであろうか。本総説では、ショウジョウバエ神経遺伝学の新しい展開を基礎に、統合失調症研究におけるショウジョウバエモデルの可能性と問題点について議論するとともに、精神疾患研究へ最初の研究例であるDISC1遺伝子についての我々の解析結果について概説した。
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(A)GeneSwitchシステムによるショウジョウバエキノコ体でのDISC1遺伝子の特異的発現。抗黄体ホルモン(RU486)の添加によりUAS配列の下流にある標的遺伝子の発現を時空間特異的に誘導する事ができる。
(B) RU486 添加なし。
(C) RU486による遺伝子発現の誘導。