研究成果 岡崎統合バイオサイエンスセンター・東島眞一 平成24年2月1日

脊髄p0ドメインの神経細胞の多様性は、前駆体の多様性と時間的制御によって作り出されている。

佐藤 千恵、木村 有希子、*東島 眞一(岡崎統合バイオサイエンスセンター) *:corresponding author

Journal of Neuroscience 32(5): 1771-1783, 2012

生物の複雑な行動は、多様な神経細胞が作り出す複雑な回路網によって作り出されています。複雑な行動を生み出す基本要素である多様な神経細胞が、どのような法則に基づいて作り出されるのかは、あまりよくわかっていません。脊髄においては、比較的システマティックに神経細胞の多様性が作り出されていることが知られています。まず、発生期に背腹軸に沿って転写因子がドメイン状に発現し、各ドメインからそれぞれ特徴的な神経細胞が誕生します。さらに、各ドメインからさらに複数のサブタイプの神経細胞が誕生することが最近の研究ではわかってきましたが、その詳細はよくわかっていませんでした。そこで、我々はドメイン内の多様性がどのように作られているのかを明らかにすることを目的として実験を行いました。まず、p0ドメインに着目し、p0ドメインから誕生する神経細胞のサブタイプの全貌を明らかにしました。さらに、その多様性がどのような法則に基づいて作り出されるのかを明らかにするために、ひとつの神経前駆体細胞を長期タイムラプスイメージングを行いました。その結果、興奮性細胞と抑制性細胞は異なる前駆体細胞から誕生すること、ある種の前駆体細胞は時間とともに異なる興奮性細胞を生み出すことが明らかになりました。このように、複数のメカニズムがからみあって神経細胞の多様性を作り出していることが明らかになりました。


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図1:発生期に背腹軸に沿ってドメイン状に発現する転写因子。各ドメインからは異なる神経細胞が誕生する。今回、我々はdbx1という転写因子を発現するp0ドメインに着目して、多様性が誕生するメカニズムを明らかにした。


 

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図2A:タイムラプスイメージング。興奮性細胞(Evx+細胞)と抑制性細胞(Pax2+細胞)が異なる前駆体から誕生している。


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図2B:p0ドメインから多様な神経細胞が誕生するメカニズムの模式図。


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