研究成果 茨城大学・岩崎唯史 平成22年11月22日
線虫の神経ダイナミクスに関する定量的数理モデル
倉持 昌弘、*岩崎 唯史(茨城大学・工学部)*:corresponding author
17th International Conference on Neural Information Processing: November, 2010
線虫では蛍光タンパク質を用いたカルシウムイメージング技術が精力的に展開され、神経活動の可視化が可能になってきています。そこでわれわれは、カルシウムイメージングの実験データと直接比較できるような神経数理モデルを構築しました(図1)。本数理モデルでは神経細胞の膜電位やカルシウム濃度の時間変化だけでなく、蛍光強度の時間変化もシミュレートすることができます(図2a‐c)。また、各イオンチャネルの電気特性も個々に調べることができます(図2d‐f)。そこでNaCl感受性神経細胞ASEを含む化学走性の神経回路に本数理モデルを適用し、各神経細胞の膜電位、カルシウム濃度、蛍光強度の時間変化を調べたところ、膜電位の変化の様子と蛍光強度の変化の様子が質的に異なる場合があり、電位依存性カルシウムチャネルの電気特性と化学シナプス結合からの寄与の違いがその原因であることがわかりました。本数理モデルを用いたシミュレーション結果と実験データを互いに比較・補完していくことで、線虫の神経活動が定量的に理解できるようになると考えています。
なお、本研究は計画研究「複数感覚入力に対する行動選択の神経回路」 (研究代表者:新貝鉚蔵)の一環として行われました。
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図1:本数理モデルにおける神経機構。各種イオンチャネルの他に、カルシウムイオンポンプ、カルシウムイオンとバッファ分子の反応を考慮した。化学シナプス結合やギャップ結合により他の神経細胞と結合している。
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図2:外部電気刺激に対する神経細胞の応答と電気特性。(a)外部電気刺激の時間変化、(b)膜電位の時間変化、(c)蛍光強度の時間変化、(d)I-V特性、(e)電位依存性カリウムチャネルの電気特性、(f)電位依存性カルシウムチャネルの電気特性。図bはASE神経細胞の実験データをよく再現している。