研究成果 甲南大学・久原 篤 平成23年6月14日

虫における行動の逆転にかかわる神経回路の暗号の発見

久原 篤1, 2、大西憲幸2、下和田智康2、*森郁恵2(1 甲南大学 理工学部、2名古屋大学大学院理学研究科)*:corresponding author

Nature Commun., 2:355 doi:10.1038/ncomms1352, 2011

動物がしめす複雑な行動や思考の調節には、脳内の神経回路を流れる複雑な情報を、1つ1つの神経細胞のなかで、混線することなく適切に伝達することが必要です。その仕組みをとらえるために、シンプルな神経回路で制御される線虫C. エレガンスの温度応答行動をモデル実験系として解析をおこないました。神経活動を自由にリモートコントロールすることができる最新の光学操作技術と、従来の遺伝子解析とを組み合わせることにより(図1)、単一の温度感知ニューロンが単一の介在ニューロンに対して、「興奮性」と「抑制性」の相反する2種類の神経伝達を行なっていることを明らかにしました(図2)。さらに、温度感知ニューロン内におけるCa2+濃度の変化率が、下流の介在ニューロンへの興奮性と抑制性の神経伝達の「切り替えスイッチ」として機能することで、温度に対する行動の逆転を引き起こすことが明らかになりました(図2)。この研究から、神経回路ないの情報の区別に関わる新しい暗号が見つかりました。

 

クリックで大きい画像へ

 

× このページを閉じる