研究成果 京都大学・松尾直毅 平成24年1月20日

局所において同期したシナプス入力

高橋直矢1、喜多村和郎2,3、松尾直毅3,4、Mark Mayford5、狩野方伸2、松木則夫1、*池谷裕二1,3(1 東京大学大学院・薬学系研究科、2 東京大学大学院・医学系研究科、3 科学技術振興機構さきがけ、4 京都大学・白眉センター、5 The Scripps Research Institute)*:corresponding author

Science 335: 353-356, 2012

記憶学習を含む高次脳機能は神経細胞同士の複雑精緻なつながりにより支えられています。したがって、そのシグナル情報伝達の場であるシナプスのin vivoでの知見は、高次脳機能を理解するうえで極めて重要な手がかりとなりますが、技術的制限などの問題により解析困難であるのが現状です。その解析困難な問題の一つにシナプス入力・可塑性の空間的パターンがあります。入力および可塑性を受ける樹状突起上のシナプス配置の空間的パターンには、少なくとも二つの可能性があります。一つは同期入力が特定箇所に集中し、クラスターを形成しているという可能性。二つ目は樹状突起全体に分散しているという可能性です。本研究では、独自の遺伝子改変マウスを活用することにより技術的困難を克服し、背側海馬CA1領域において可塑性を受けたシナプスがクラスターを形成していることを強く示唆する結果を得ることができました。本研究により見いだされた現象は樹状突起における入力の非線形的な加算に大きく影響すると考えられ、実際の脳内で働いている神経細胞の演算方法の理解に大きく貢献するものです。

 

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新規環境探索後のマウスの背側海馬CA1錐体細胞におけるGFP-GluR1陽性スパイン(後シナプス構造)は樹状突起上で8μm以内に局在化している確率が高いことを見出した。


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