研究成果 関西医科大学・中村加枝 平成22年5月5日
サル背側縫線核における報酬情報の表現
*Ethan S. Bromberg-Martin1, Okihide Hikosaka1, and Kae Nakamura2 (1 Laboratory of Sensorimotor Research, National Eye Institute, National Institutes of Health, 2 Department of Physiology, Kansai Medical University, School of Medicine) *:corresponding author
Journal of Neuroscience 30: 6262-6272,2010
ドパミンの報酬情報処理機能に関しては、ドパミンニューロンの発火は報酬予測誤差を表現していることなど、よく調べられています。一方、セロトニンも報酬情報処理に関与していることが示唆されていますが、報酬情報のどの要素を表現しているのか知られていませんでした。セロトニン細胞は脳幹の背側縫線核に多く存在します。そこで、本研究では、報酬量を操作した眼球運動課題遂行中のサル縫線核からの単一神経細胞外記録を行いました。その結果、背側縫線核ニューロンは、課題遂行のその時々に期待されている報酬の量を持続的に表現していることがあきらかになりました。このような持続的な報酬の量の表現は 短い間しか発火しないドパミンニューロンとは対照的です。背側縫線核ニューロンの発火は実は非常に複雑で、感覚・運動さまざまな要素に反応します。しかし、主成分分析により、持続的な報酬量の表現は、その他の要因に比べ、最も主要な成分であることがわかりました。背側縫線核はドパミンニューロンにも投射しており、ドパミンニューロンで記録される報酬予測誤差信号の計算の一部に関与している可能性も示唆されます。
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背側縫線核でみられた3つのパターンの神経活動。赤は報酬が多い場合、青は少ない場合を示す。 Neuron Aではターゲットが提示され報酬が得られた後まで持続的に、報酬の多い場合により発火した。Neuron Bでは報酬が少ない場合により発火した。