研究成果 理化学研究所・岡本仁 平成22年1月27日

ゼブラフィッシュにおける哺乳類外側手綱核相同領域の発見

天羽龍之介1,2、相澤秀紀1,3、鷹架美賀子1、小林恵美1、高橋里英子1、青木田鶴1、*岡本仁1,2,3 (1理化学研究所・脳科学総合研究センター・発生遺伝子制御チーム、2早稲田大学・先進理工学研究科・生命医科学専攻、3科学技術振興機構・CREST) *:corresponding author

Journal of Neuroscience 30: 1566-1574, 2010

 手綱核と呼ばれる脳部位は魚から人間まで脊椎動物に共通して存在しています。哺乳類では手綱核はさらに外側と内側手綱核の二つの領域に分けられ、このうち外側手綱核はセロトニンやドーパミン(モノアミン)神経細胞の活動を制御することで運動や認知行動を制御する重要な領域であることがわかってきています。しかし、ゼブラフィッシュのようなモデル動物においては外側手綱核の有無すら不明であり、その機能の重要性にもかかわらず、この神経回路の遺伝子レベルでの操作は困難でした。今回私たちはゼブラフィッシュにおいて外側手綱核の相同領域を見つけるため、脳の部位を特徴づける①神経結合、②遺伝子発現が共通する領域を探索しました。この結果、ゼブラフィッシュの腹側手綱核が哺乳類外側手綱核と共通した縫線核への神経結合、遺伝子発現を備えていることが明らかになりました(図1)。さらに遺伝子発現をもとにゼブラフィッシュ腹側手綱核の形成過程を観察すると、発生の早い段階では哺乳類と同じように外側に存在していることがわかりました。これらの結果はゼブラフィッシュにおいても外側手綱核の神経回路が進化的に保存されていることを明らかにしており、手綱核-モノアミン神経回路が適応行動制御で担う役割を遺伝子レベルでの操作により解明する上で重要なステップとなります。

 

 

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図1 A: ゼブラフィッシュ脳を背側斜めから見た模式図。緑色と赤色で示された背側手綱核は脚間核へと神経軸索を伸ばす。一方青色で示された腹側手綱核は縫線核へと特異的に神経軸索を伸ばす。
B: ゼブラフィッシュ手綱核の冠状断面像の模式図。遺伝子発現、軸索投射の特徴から背側手綱核(外側亜核・内側亜核)と腹側手綱核に分けられる。
C: ラット手綱核の冠状断面像。外側手綱核に特異的にプロトカドヘリン10 (Pcdh10)が発現する(赤色)。青色は核。MHb:内側手綱核、LHb:外側手綱核。スケールバー:100 mm
D: 遺伝子組換えゼブラフィッシュ(Tg(brn3a-hsp70:GFP))手綱核の冠状断面像。腹側手綱核において哺乳類外側手綱核と共通して、プロトカドヘリン10a (pcdh10a)が特異的に発現する(赤色)。緑色は背側手綱核(内側亜核)特異的に発現させたGFP。青色は核。vHb:腹側手綱核。スケールバー:50 mm。

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