研究成果 首都大学東京・坂井貴臣 平成22年10月27日

ショウジョウバエのカルシニューリン調節因子はオスの求愛活性に関与している

*坂井貴臣、相垣敏郎(首都大学東京・理工学研究科生命科学専攻)*:corresponding author 

NeuroReport (2010) 21: 985-988

 ショウジョウバエのsarah(sra)遺伝子はCa2+/カルモジュリン依存的な脱リン酸化酵素であるカルシニューリンの調節因子をコードしています。sra遺伝子は様々な生命現象に関与していますが、特に興味深いこととして、ショウジョウバエの学習・記憶に関与していることが挙げられます。sra突然変異体は学習異常を示します。ショウジョウバエの脳構造の1つであるキノコ体は学習・記憶の中枢だと考えられていますが、キノコ体においてsra遺伝子を過剰に発現させても学習異常を示します。このことは、キノコ体におけるSraタンパク質の適切な発現量が正常な学習に不可欠であることを意味しています。キノコ体はショウジョウバエの学習・記憶のみならず、オスの求愛行動を制御していることが知られています。我々はsraがオスの求愛活性の制御にも関与していることを新たに見出しました(図1)。sraノックアウトバエおよびsra過剰発現バエ共に野生型よりもオスの求愛活性が低下していました。さらに、キノコ体でsraを過剰発現させると求愛活性が低下し、sraノックアウトバエのキノコ体のみに正常なsra遺伝子を発現させると求愛活性が野生型レベルまで回復することを見出しました。これらの結果から、キノコ体におけるsraの適切な発現量がオスの求愛活性に必要であることが明らかとなりました。

 

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