公募研究 筑波大学・古久保 – 徳永 克男

ショウジョウバエをモデルとする報酬記憶の分子行動学

筑波大学・大学院生命環境科学研究科 教授

古久保 - 徳永 克男

 ヒトにおけるフラッシュバルブ記憶や心的外傷に伴う記憶など、ある種の記憶は限られた経験により瞬時に獲得され、しかも長期にわたり維持される。我々は、このような記憶の安定度を左右する神経基盤の解明のために、単純な脳を持つショウジョウバエ幼虫に着目し、報酬記憶の形成機構について解析を行っている。幼虫では、ショ糖による報酬学習により2時間以上の安定度を示すCREB依存性中期記憶(MTM)が生成されるが、キニーネによる罰学習ではわずか20分で消失する短期記憶しか形成されない。本研究では、ショウジョウバエをモデルとして報酬記憶を制御する新たな学習・記憶遺伝子の同定を行うと共に、我々が確立してきた幼虫パラダイムを基礎に、報酬記憶の獲得と固定を制御する神経回路の同定を行う。これにより、遺伝子のみならず、神経回路の機能的同定を含む分子行動学的解析を推進する。

 

 

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図:ショウジョウバエ幼虫の中枢神経におけるオクトパミン神経細胞。オクトパミンは脊椎動物のノルアドレナリンと類似する神経伝達物質であり、ショウジョウバエ幼虫の嗅覚連合学習において報酬情報の伝達を介在している。

 

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